せっかく、渋川春海が旬の人なので、この本を紹介したい。

  • 書名:『江戸の天文学者 星空を翔ける 幕府天文方、渋川春海から伊能忠敬まで』
  • 著者:中村 士
  • 出版社:技術評論社
  • 出版年:2008年

渋川春海という名前は、私はこのときはじめて知った。

渋川春海を主人公とした『天地明察』が世に出たのは、この翌年のことである。

天文学という学問は、天体の動きを探る学問だが、それと同時にやはり地球を知る学問なのだという認識と、伊能忠敬というワードに引っかかって買ったのである。

ちなみに、知りたい!サイエンスシリーズの一冊である。

この本は、江戸時代に活躍した天文学者について語っている本である。

タイトルからするとその通りなのだが、+αがある。

天文学者のみならず、天体観測機材を作成した者、それどころか、その時代の天文学に関する事情まで書いてある。

つまり、この本を読めば、江戸時代の天文学事情がつぶさに分かってくる。

  • どういう経緯で日本国内における天文学が発展してきたのか、
  • 海外からどういう技術が流入してきたのか、
  • それに対して日本人はどういう発想で対処していったのか、
  • 西洋に先んじて、日本ではまた新しい発見があった

などなど、

非常に興味深い話が満載である。

特に私の興味を引いたのは、一部ではあるが機材の使い方がしっかりと書いてあるところだ。

上述の通り、天体観測は測量のための重要なファクターであると考えている私は、この本以外にも天体観測の歴史ややり方を紹介する本をいくつか持っている。しかし、八分儀の使い方を構造の説明を踏まえながら説明していた本には出会ったことがなかった。簡単な説明が加えられている本はあったが、実物を持っていないと、やはりいまいち実感がわかなかったのだ。

ちなみに八分儀とはこれのことだ。※八分儀にご興味の方は、この画像のAmazonリンクから購入可能

この本を読んだことによって、この機器の構造を理解しながら、その使い方を学ぶことができた。

八分儀の使い方が非常によくわかった。

原理がわかれば、なんということはない。

しかし、

原理がわかることによって、新しく生まれてくるものがある。

今はまだ、特別何かが生まれているわけではないが、それそのものを正しく理解することによって、新しい応用ができる可能性が出たということで、私にとっては非常に有意義であった。

その他、ちょっとした小噺や将軍の話など、江戸時代の天文学に関することが数多く語られている。

天地明察』を読んだ方、読む前の方は、これを読んでみると、また渋川春海や江戸時代の天文学に関する新たな認識が生まれてきて、非常に面白いのではないだろうか。

また、今国立科学博物館で『渋川春海と江戸時代の天文学者たち|2015年12月19日(土)~2016年3月6日(日)』もやっているので、それも一緒に見てみると、より知識が深まるかもしれない。

過去記事:天地明察(映画)2016年1月6日