• 書名:『新編武蔵風土記稿』を読む
  • 著者:重田正夫、白井哲哉
  • 出版社:さきたま出版会
  • 出版年:2015年

『新編武蔵風土記稿』をご存じだろうか。

江戸時代に編纂された武蔵国の風土記稿である。本書によると、江戸幕府の直営事業として文化7年(1810)に編纂作業が始まり、天保元年(1830)に完成したとのことである。

武蔵国とは、今で言うところの東京都、埼玉県、横浜市と川崎市の付近である。

風土記稿は、地誌であるので、『新編武蔵風土記稿』は約200年ほど前の東京都、埼玉県、神奈川県の東部の姿を現した史料であると言える。

この史料は、古くから有名であるようである。

※歴史分野の人間ではないので、あまりよく知らなかったが

ただ、実際読んでみると、いろいろと興味深く、江戸時代の武蔵国各地のことを知ることができて、なかなか面白い。

ちなみに、この『新編武蔵風土記稿』は、明治時代に内務省地理局が発行したものが国会図書館のデジタルコレクションでWeb公開されており、無料で閲覧することができる。

さて、この 『新編武蔵風土記稿』を読む という本書であるが、

国会図書館で公開されている『新編武蔵風土記稿』は、実際の内容は無料で読むことができるわけだが、全265巻と膨大であり、やはり、史料をある程度読み慣れた人間でないと、ちょっと読みにくい。

※とはいえ、崩し字ではないので、ちょっとがんばれば特別な技能がなくてもおそらく読むことができる。

本書はその中から一部を抽出し、わかりやすく解説してくれている。

例えば、川越の城下町がどのようにしてできたのか、浦和宿や大門宿の由緒、武蔵野の原風景などなどである。

当然、原本を読めば全て読み解くことができる。

しかし、いきなり読んでみても、なかなか読み解くことは簡単ではない。

ここに掲載されているものだけでも楽しめるだろうが、ここをはじめの一歩として、読み進めるキッカケとしてみるのも良いのではないだろうか。

また、最後にはこの『新編武蔵風土記稿』を教育に活かすにはどうしたら良いかといった内容も記されている。

学校教育の中で、歴史のみならず、地理という観点からも過去の風景を想像するための良い教材となるのではないだろうか。