• 書名:天災から日本史を読みなおす―先人に学ぶ防災―
  • 著者:磯田道史
  • 出版社:中公新書
  • 出版年:2014年

2011年の東日本大震災を契機として、様々な側面から災害を見直そうという流れが生まれてきた。

その中の最たるものが歴史、すなわち古記録や日記、碑文などから災害を見つめ直そうという災害伝承についての研究であるといえる。

東日本大震災以前においても、古記録や日記などから地震や津波、天候などを読み解こうとしてきた研究は存在していた。

しかし、その多くが歴史学の専門家ではなく、地震学者や気候学者などの自然科学の専門家が必ずしも専門とは言えない史料へアプローチしている例が多かった。

少なくとも、私が知る限りは、あったとしてもあまり公表されてこなかったと思える。

近年、歴史学の専門家も災害についての記録を世の中へと活かす素晴らしい成果が多く見え始めてきた。

本書はそんな一冊である。

本書の著者は、『武士の家計簿』で一躍有名になった磯田道史氏であり、テレビや雑誌記事などに引っ張りだこになっている時の人である。

歴史として人々の興味を大いに引く、豊臣秀吉とその後の歴史を大きく左右した<地震>から話は始まる。

地震、津波、噴火、土砂崩れ、高潮、台風……、と様々な災害が日本の歴史にどのように関わってきたのか……!?

当時の社会背景や史料の記述から読み取れる推測、活かされるべき教訓、歴史上に住んでいた人々と現在を生きる我々とをリンクさせる様々な仕掛けが含まれている。

歴史とは、現在に生きる我々が未来を切り開くために学ぶ人類の経験である。

とどこかの誰かが言っていたような気がするが(もしかしたら、私の中で複数の人間が言ったことが複合しているような気もするが)、

まさに本書は、読みやすい文章と切り口から、それを体現してくれるものである。

歴史に興味がある人も、ない人も、関係なく読み進められる本であろう。