何年か前の本だが、ちょっと本棚で見つけたので、紹介してみよう。

  • 書名:地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇
  • 著者:竹内正浩
  • 出版社:中央公論新社
  • 出版年:2013年

ブラタモリの影響などもあって、まちあるきという、我々地理の人間的に言うと巡検が世間一般でも流行ってきた。

それは、観光の一つの形態として、古くからありながら、それを様々な側面から見たり、ツールが生まれたことによって、再発見されたといって良い。

昔から、まちあるきはあった。

この本は、そんなまちあるきを楽しくしてくれる本の一つである。

著者は、他にも地図と愉しむ東京歴史散歩シリーズを手がけており、これはその中でも地形に特化したものだ。

本は以下のように二部構成となっている。

  1. 第一部:東京の不思議な地形を歩く
  2. 第二部:東京お屋敷山物語

第一部は、東京には不思議な地形がたくさんあるというお話である。

例えば、神田に刻まれた神田川の谷などは、この本で取り上げられなくとも有名だ。

神田のせり出した台地を貫くようにして流れている神田川は、どのようにしてできたのか。

そういった話が現在の地図や、過去の地図(明治時代など)、地形が分かるような地図、写真などを駆使して、分かりやすく説明されている。

第二部は、東京にあるお屋敷山のお話だ。

地図センターに行ったときに、西郷山公園という公園に遭遇した。

高台にあって、心地の良い公園だ。

「西郷山というくらいだから、西郷隆盛に縁のあるかな」と思っていたが、西郷従道の屋敷だったらしい。

東京では、よく人の名前が付いた地名を見かける。

元々、その名前の人間の屋敷だったところが数多くあり、その名残として、名前が知名に残っているのだ。

今では、かなり細かく分譲されてしまっていて、見る影が無いところが多いわけだが、元々の屋敷の敷地を見てみるとビックリする。

二万五千坪だとか、十四万坪だとか、桁違いの広さだ。

そういった大屋敷を構えていた人々が、どういう経緯で、その屋敷を手放していったのか、どうして、今のような形になったのか、そういった土地の歴史が当時の事件や経済情報を踏まえながら説明されている。

街を歩いていて、「あれ?」と思ったことがあるのは、私だけではないだろう。

この本は、その「あれ?」の答えを数多く載せている。

また、この本を読んだ後、その場所をたまたま訪れた際に、思い出して、「なるほどッ」と納得してしまうこともよくある。

この本を片手にまちあるきをしてみるのも良いだろう。

その街を知っていることが、また、その街へ行く新しい愉しみとなる。

そういった本である。